この近江(おうみ)の麻(あさ)長襦袢は、麻100%で織られています。暑い夏の季節には、麻のきものほど涼(すず)しい衣服はありません。その秘密は、肌と着物の間にできるホンのわずかな空間で汗が蒸発(じょうはつ)するとき、体温から気化熱(きかねつ)を奪(うば)い心地よい清涼感(せいりょうかん)を与えてくれるからです。実は、繊維の中で最も発汗作用(はっかんさよう)が高いのが天然繊維(てんねんせんい)の麻なのです。まだ科学的根拠のない昔、経験的にそんなことまで知っていた古(いにしえ)の日本人の感性に敬服させられます。 また、近江の麻の魅力は、微細(びさい)で丈夫(じょうぶ)、手触(てざわ)り、肌触(はだざわ)りが良く、上質の麻ならではの艶(つや)・光沢(こうたく)には品格(ひんかく)さえ感じられます。そんなことから寺社仏閣(じしゃぶっかく)が多く、ことさら厳(きび)しい夏の京都において高僧(こうそう)の着物や長襦袢に多用(たよう)されています。
近江の麻長襦袢のような本麻(ほんあさ)の長襦袢は、単衣(ひとえ)に仕立て、単衣の着物や薄物(うすもの)(絽(ろ)や紗(しゃ))などの下に着ます。自宅の洗濯機で洗えますが、天然繊維の麻にアイロンは禁物(きんもつ)です。中性洗剤で水洗いし脱水して陰干(かげぼ)ししたら、そのまま着られます。この長襦袢には、女物特有の地紋(じもん)や地柄(じがら)が有りません。その分、生地(きじ)は丈夫(じょうぶ)な上に、広幅(ひろはば)ですので男女共用に着られます。時期は、地域にもよりますが寒くなければ5月の連休明けから11月の初旬までは着られるでしょう。ただし、 6,7,8月は絽の半衿(はんえり)、それ以外は塩瀬(しおぜ)の半衿(はんえり)(または冬物)を付けてください。
近江(おうみ)とは、現在の滋賀県のこと。「古事記(こじき)」によると当時琵琶湖(びわこ)は近淡海(ちかつあわうみ)と記(き)され、この「あはうみ」が「おうみ」になったと言われています。滋賀県の湖東(ことう)地区では室町(むろまち)時代より麻織物が生産され、特に江戸時代には奈良晒(ならさらし)や越後縮(えちごちぢ)みと並び称(しょう)せられる「高宮布(たかみやぬの)」が上質な麻織物としての地位を築きます。彦根藩(ひこねはん)は、これを保護し将軍家への献上品(けんじょうひん)としたほどです。1977年には近江上布(おうみじょうふ)として国の伝統的工芸品にも指定されます。近江の麻(おうみのあさ)は、近江上布(おうみじょうふ)や近江縮(おうみちぢ)みが持つ高度な伝統技術から生まれた現代の麻織物です。
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