塩沢は、大島・結城に次ぐ日本三大紬の一つですが、この塩沢には、新潟県塩沢町で生産される本塩沢と十日町市で生産される十日町塩沢があります。名前の上では紬であるべき塩沢ですが、現在では織節のある紬生地は、ほとんど織られていません。京都で生産される高級織物「西陣お召し」に対抗して織られた「塩沢お召し」が、戦前戦後を通じて一世を風靡しましたが、当時、圧倒的な生産量を誇った「塩沢お召し」が今の塩沢織物の源泉です。
「単衣といえば塩沢」と知られるように、初夏と初秋の数か月、きもの通を「とりこ」にして離さないキモノ。「シャリッ」とくる「しゃり感」あふれる肌ざわりは塩沢ならではのものです。塩沢には高級品でありながら表面にでる派手さはありません。実はそこが渋い贅沢品なのです。紫陽花や菖蒲の花が咲く頃は、鉄紺(藍色)の塩沢に薄地で羅の名古屋帯。山ゆりの花の咲く頃は、白地の絣に博多帯。
大島、結城は素晴らしい織物です。しかしポピュラ-に成り過ぎたキライもあります。その点、塩沢はキモノを良く着る人でもなかなか知る人のない逸品で、それだけに隠れたお洒落感を味わえます。温暖化の進んだ現在では、年々単衣を着る期間が長くなりつつありますが、着物に拘る人ほど、その風格や「絶妙の地風」がわかるのが塩沢です。
最近の暖かい気候なら、地域にもよりますが単衣でもお洒落ものとして4~6月、9~11月(気温22℃~28℃)頃まで幅広く着られます。 (資料:きものカルチャー研究所「初等科テキスト」)