初等科7.4.2 美しさの秘密ⅱ

伊藤若冲そして、芸術史上もっとも特筆される点は、絵師や彫刻師が家元制のような一門(いちもん)によって代々継承され発展してきた経緯(けいい)があります。たとえば、金剛力士像(こんごうりきしぞう)に代表される仏師(ぶっし)運慶(うんけい)快慶(かいけい)」、狩野派(かのうは)を代表する絵師「狩野永徳(かのうえいとく)」、「狩野探幽(かのうたんゆう)」など。親から子、子から孫へ。また、師から弟子へと数十年から数百年にも渡り、その思想や技術が受け継がれています。西洋の画家の多くが一代限りの単発的な芸術家であることを考えれば、我が国の伝統的な芸術は異質かも知れません。しかし、「思想や作風を代々受け継ぐことで弟子は師を乗り越えようとした。そこに技術の進歩があった」。江戸絵画「伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)」の収集家:ジョー・プライス氏は、そう述べています。

泥大島さらに、決定的な要因は、きものが実用品でありながらも高価な財産であったこと。今でもきものは、お世辞(せじ)にも安いとは言えません。ひと月分の給料でも買えない物が当たり前のように販売されています。時代劇なら、生活費に困り亭主に隠れて大切なきものを質屋に持ち込む献身的な女性の姿は印象的ですが、1960年ころまでは、それだけきものの価値が世間一般に共有されていたのです。つまり、きものや帯が 質札(しちふだ)になること自体、売り手も買い手も、もちろん、生産者も含めて、多くの人々が品定(しなさだ)めや 目利(めき)きが出来たのです。これは、きものが財産として、いつでも換金(かんきん)できる価値を持っていた(あかし)です。このような習慣は鎌倉時代から続いていたようですが、以来、厳しい目にさらされながら淘汰(とうた)されて来たきものだからこそ、洗練された美しさがあると思うのです。

初等科7.9.
初等科9.3.
初等科10.3.1
初等科17.15.2
初等科17.15.3
初等科17.19.1
中等科7.4.6
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