紗とは、搦み織、あるいは、捩り織といわれる布面に隙間のある織物。羅に次ぐ難しい織物ですが、すでに奈良時代には唐から伝来し正倉院裂として残されています。特に冷房のなかった時代には、暑い夏の衣服として重用されましたが、現代でも25℃を超えるような夏日には、正絹の紗に勝る生地はないように思います。何より軽くて動きやすく、通気性が良いので涼しいばかりか、汗ばむ時期には吸汗性と発汗性に優れ、冷房の効いた室内では一定の保温効果もあります。やはり、宙を舞う蝶の生命カプセル「繭の糸」以上の繊維はないのかも知れません。